最近痩せたと評判の奏子です。
今日は妹にまで痩せたっていわれた!やたっ♪
時かけを見たい、今日この頃。
『君と 』
「うわ。お前バカじゃねぇの」
「・・・なにがだよ」
待ち合わせに遅れないよう慌ててここまで来た俺に向かって、開口一番それ?
本日第一声の満の言葉に、思わず口を尖らせる。
・・・なんだよ、心底哀れむような顔しちゃってさ。
正面から吹く強い風を受け止める俺の歩みにあわせて、隣を歩きだす満。
「天気予報見てねぇのかよ。いや見てなくても、家出た時点で気がつけよ」
「だーかーらー、なにがってきいてんの」
ホントはきかなくても分かってる。満が言ってる意味。
とぼけて見せたのは、単なる強がりで。
「いや、明らかに今日は半袖日和じゃないだろ」
その通り。
この低い空と強い風が、日中の気温をぐぐっと下げていた。
日照時間が短くなった上に、この厚い雲。
昨日までの残暑を吹き飛ばすかのような風は、徐々に俺たちの肌を冷やしていく。
夏の気配が濃厚だったのが、今日はこの天気のおかげですっかり秋の様相だ。
「あ、なになにー?満ってば寒がりだっけ?」
「あれ、どっちかというと陽平の方が寒いのダメだったような気がするんだけど、気のせいだっけかぁ?」
「ちゅーか、今日そこまで言うほど、気温低くないでしょー」
「ふーん・・・じゃあ別に半袖でも平気なんだな。そっか、よかったよかった。じゃあ今日一日外をうろつく予定だけど、その半袖で若さを主張してくれ。まぁ風もちょっと強いけど、お前なら大丈夫だろ。風邪引く心配もないな。あー若さっていいよなー」
「嘘ですゴメンナサイ」
観念して頭を下げたが、だからどうなるってモンでもない。
でもまさか、ここまで冷えるとは思わないでしょ?
昨日まで、まだ蝉もないていたというのに。
「あーもうっ!風強い!冷たい!!」
「だから半袖着てきたお前が悪いんだろ」
「だって、家出たとき時間なかったんだもん。着替える暇なんかないっての」
「あ、そ」
「なんだよー、満ってばつめたぁいー。俺、待ち合わせに遅れないように慌てて来たのにっ」
「俺にどうしろと!」
「何か打開策を考えよう。ねっ」
我慢できないほどじゃないんだけどな。
それでもやっぱり手のひらで触れる腕の冷たさは、心地よいものではなくて。
「例えばー、・・・今日の予定を変更して満んちに篭るとか!」
「知ってるか?映画見たいって言ったの、お前だからな」
「わかってるって。でもあの辺の店、ブラブラしたいっつったのは満だったしょ?外歩くのってそれじゃん」
「買いてーもんがあんだよ」
「・・・ふーん。じゃあ今日一日、こうして歩いてやるっ」
隣を歩く満の腕に、俺の腕を絡める。
お。これ、思ってた以上にあったかい。
「ばっか、離せよ」
「どっちがいい?」
二択。
こうして外を歩くのと、家に篭るの。
でも答えなんて分かりきってる。
「・・・俺んち」
「よしきた!」
「この体勢で一日過ごすわけにはいかねーだろ」
「そう?」
答えなんて分かりきってる。
渋々といった感じで返事してるけど、本当はどうでもいいんだよね。
俺と一緒なら。
自惚れと思われるかもしれないけど
満はそんなこと言わないだろうけど
実は、絶対そう思ってるって確信があったりする。
だって、俺もそう思ってるから。
満と一緒なら、どこにいてもいいって思ってるから。
一緒に居ることこそ、俺たちの望み。